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緑のリサイクル技術

2)根株移植の試験植栽

根株移植の試験植栽事例には、以下のようなものがある。

 

(1)根株移植における根株の形状と生育状況(注2)

九州大学新キャンパス用地内の運動施設ゾーンの盛土斜面で、アラカシを中心とした萌芽力の強い樹種の根株が2003 年10 月〜11 月に仮移植され、2004 年の1 月に盛土斜面に移植された。活着状況等の概要は以下のようである。

根株移植は、一般の樹木移植と比較して工法が簡単かつ経済的であり、土地造成工事に組み込むことが比較的容易である。また、自生樹木を活用できることから、地域本来の種の保全のためにも有効である。

多くの種は萌芽再生のために地下部に養分を蓄えており、火災や伐採により幹が除去されると、地下に蓄えられている養分が新しい生長のために使われる。根株移植では、根部の一部と幹の基部を移植してそれらの蓄積がもたらす再生力を利用する。

本研究では、移植する根株の地下部と地上部の体積、切株の直径や高さなどを測り、それらと根株の活着・生育との関係を検討した。

活着状況

調査された103 本の樹種ごとの生育状況および活着率を表−1に示す。そのうち生育状況が良好な数が71、やや良好が19、やや不良が5 であり、活着率は92.2%であった。タブノキ、ネズミモチ、ヤマザクラの活着率は100%、シロダモは90%、アラカシは89.9%で、何れの樹種も2001 年に行った根株移植の活着率より高かった。

 

表-1 樹種ごとの生育状況および活着率

樹種 本数 生育状況 活着率(%)
良好 やや良好 やや不良 不良 枯死 2004 2001*
タブノキ 9 7 2 100.0 88.0
ネズミモチ 10 9 1 100.0 93.0
ヤマザクラ 5 3 2 100.0 89.0
シロダモ 10 6 3 1 90.0 74.0
アラカシ 69 46 11 5 4 3 89.9 82.0
103 71 19 5 4 4 92.2 83.4

* 2001年4月に根株移植した樹木の活着率

切株の規格と生育状況との関係

活着率が89.9%であったアラカシの切株の直径や切株の高さを大きさ別に分けて、各々の活着率を調べた結果、直径の大きさ別の活着率は何れも80%を超えていること、直径12 p〜16 pの活着率が一番高いことが分かった。直径の大きさと活着率の間には一定の傾向が見られなかったが、直径が大きくなるほど生育状況が良好な樹木の比率が高くなる傾向が見られた。切株の高さ別の活着率においては、高さ40cm までは活着率が高くなったが、40cm 以上では低くなる傾向を示した。

考察

切株の高さが40cm を超える樹木の活着率が低くなる傾向を示したのは、切り高の高い方が乾燥や日焼けなどによる被害を受けて樹皮が剥がれやすく、萌芽した芽が枯死する可能性が高くなる1) ためであると考えられた。

切株の直径が20cm を超える樹木の活着率は20cm 未満の活着率より若干劣るが、生育状況の良好な樹木の比率が最も高かったことは、直径が大きくなるほど優良な萌芽枝が多く発生し、萌芽枝の平均体積が大きくなっていたためであると考えられた。このことから根株を優良な樹木へ生育させるためには直径の大きい樹木を移植するほど有利であると考えられるが、根元直径25cm 以上の樹木は活着率が劣ることと、ブナ二次林の萌芽能力は樹齢25〜30 年をピークに衰えていくことから、ある直径以上の大径木の移植は避けた方が良いと考えられる。

アラカシにおける萌芽枝の本数や体積の増加には、根部の体積が幹部の体積や切株の直径より寄与しており、根株移植した樹木の生長率を上げるためには根部の体積を出来る限り大きくした方が良いと考えられる。

引用文献 ソン ゼェタク・薛 孝夫:根株移植における根株の形状と生育状況:九州大学農学部演習林
(2)大規模宅地造成地の緑化における既存樹木の根株移植手法

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