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緑化センターについて

マツの害虫

 「松を守ろう」(1998年12月、(財)日本緑化センター、絶版)を参考に、マツの害虫について解説します。

 登録農薬は「独立行政法人農林水産消費安全技術センター ホームページ」に掲載されているものを記載しています(平成21年3月現在)。

 

 

葉の害虫

 マツカレハ

概要

マツカレハの幼虫は松毛虫とも呼ばれ、マツ林に大発生する主要な森林害虫。マツ類の他カラマツ、ヒマラヤスギ、モミなどの葉を食べる。

マツカレハ幼虫
マツカレハ幼虫

被害

幼虫の被害は8〜10月と4〜6月。普通、夏から秋の被害は少なく、幼虫が最終齢時の春に被害が目立つ。葉の食害量が60%以下では成長にあまり影響はしないが、90%以上になると成長への影響が大きく、100になると枯死する場合もあるので、大発生時には注意する。

幼虫の
生態

幼虫は体長約60mm、頭部は暗褐色、胴部は銀色−黄褐色で、全体に黒い長毛がある。1年に1〜2回の発生。1年に1回の発生の場合は成虫が7〜8月に現われ新梢の針葉に卵をかためて産み付ける。ふ化した幼虫は集団で葉の側辺部を食害するため被害部は褐変枯死する。幼虫は成長するにつれて分散して針葉全体を食害する。11月ごろ樹幹を降りて樹皮の割れ目や落葉下などで越冬し、翌春3〜4月に樹上に登って再び針葉を食害する。

防除

幼虫の越冬習性を利用して10月ごろ樹幹に“こも''や新聞紙などを巻き付け、ここで越冬した幼虫を集めて早春に焼却する。発生の多いときは9月か4〜5月に薬剤を散布する。薬剤の効果は幼虫の若齢期で高く、老齢期では低くなる。

登録農薬:有機リン系殺虫剤(ディプテレックス乳剤、アセフェート剤)、昆虫成長制御剤(デミリン水和剤)


 マツノキハバチ

概要

5〜6月ころに幼虫は群棲してアカマツ、クロマツ、ハイマツなどの針葉を食害する。幼虫は終齢期を除いて常に群棲する習性があり、幼齢林や疎開した林で大発生することがある。普通、同一林分で1〜2年間の発生で終息し、連年にわたって発生することはあまりない。

マツノキハバチの幼虫
マツノキハバチの幼虫

被害

幼虫は4〜5月に現われ、1〜2齢期の幼虫は1本の針葉を数頭で取り囲むようにして食害し、針葉の中心を糸状に残す。3齢虫以降は針葉を先端から基部まで食いつくすようになり、食害量も多くなる。6月ごろ幼虫は成熟して木から地表面に降り、落葉の中に潜って繭を作る。繭内幼虫で夏を過ごして9〜10月に蛹になり、成虫は9月下旬から10月に出現する。卵は針葉の組織内に連続して産みつける。

幼虫の
生態

幼虫は体長20mm。頭部は光沢のある黒色、胴部は背面から側面にかけて黒色であるが、側面から腹面は淡黄緑色である。普通、1年に1回の発生。卵は針葉の組織内で越冬。

防除

防除は、幼齢木では群棲している幼虫を小枝ごと切除して捕殺する。発生の多いときは4〜5月の若齢幼虫期に薬剤を散布する。

登録農薬:有機リン系殺虫剤(ディプテレックス乳剤、MEP乳剤)


 マツノミドリハバチ

概要

幼虫はアカマツ、クロマツ、ストローブマツ林にときどき大発生することがある。一般に幼齢木に発生が多く見られ、5〜8月には旧年葉を食害し、8〜11月には当年葉を食害する。

被害

幼虫は群棲して加害するが、マツノキハバチのように同一針葉に体を接して生活するようなことはない。春から夏に出現した幼虫は旧年葉を食害するが、夏から秋に出現した幼虫は当年葉も食害するので、全葉を失った被害木は冬期に枯死するか、春にマツギボシゾウムシなどの加害を受けやすくなる。1回目に出現した幼虫は針葉間や梢頭部に繭を作るが、2回目に出現した幼虫では樹幹の粗皮の割れ目や地表の落葉間に潜って繭を作る。

マツノミドリハバチの幼虫
マツノミドリハバチの幼虫

幼虫の
生態

幼虫は体長約20mm。頭部は橙黄色で側面に大形の黒斑がある。体は全体に光沢のある緑色で、背面に淡灰色の帯がある。1年に2回(一部3回)の発生。繭内で越冬した幼虫は春に蛹化する。普通、成虫は5〜7月と7〜9月に羽化する。卵は針葉の組織内に産みつける。幼虫は5〜8月と8〜11月に出現する。

防除

防除は、発生の多いときは5〜6月か7〜8月の若齢幼虫期に薬剤を散布する。

登録農薬:有機リン系殺虫剤(MEP乳剤)


 マツノクロホシハバチ

概要

幼虫はアカマツ、クロマツ、カラマツ林にときどき大発生することがある。幼虫は群棲して食害する習性がある。同一林分で1〜2年の発生で終息し、連年にわたって発生することは少ない。

マツノクロホシハバチの幼虫
マツノクロホシハバチの幼虫

被害

若齢幼虫は産卵された針葉の片側を食害するが、成長するにつれて針葉全体を食いつくすようになる。幼虫は群棲して一枝を食いつくすと別の枝へ移動して食害を続け、全葉が食いつくされることがある。1回目に出現した幼虫は成熟すると主として枝上に繭を作り、2回目に出現した成熟幼虫は樹幹を降りて地表に浅く潜って繭を作る。

幼虫の
生態

幼虫は体長約25mm。頭部は黒色、胴都は黄色である。1年に2回の発生。繭内で幼虫越冬し、翌春に蛹化する。成虫は6月と8〜9月に羽化する。卵は針葉の組織内に産みつける。幼虫は6〜8月と8〜10月に出現する。

防除

防除は、幼齢木では群棲している幼虫を小枝ごと切除して捕殺する。発生の多いときは6〜8月の若齢幼虫期に薬剤を散布する。
登録農薬:有機リン系殺虫剤(MEP乳剤)


 マツノカキカイガラムシ

概要

幼虫はアカマツ、クロマツの他、外国産マツ属の葉に寄生し、加害する。

マツノカキカイガラムシ
マツノカキカイガラムシ

被害

成木での被害は軽微であるが、若齢木では多発すると衰弱したり枯死することもある。被害葉は黄変〜褐変してすす病を併発する。

幼虫の
生態

雌介殻は長さ約3mmで細長く、かき殻状で紫褐色。雄介殻は小形で細長く、黄褐色〜茶褐色である。1年に2回の発生。越冬は主として成虫態である。幼虫は5〜6月と8〜9月に出現するが、発生はかなり不規則である。

防除

防除は、隙間伐や枝打ちをして通風をはかることである。発生の多いときは、5月か8月のふ化幼虫期をねらって薬剤を散布する。

登録農薬:ピレスガイド系殺虫剤(アレスリン、マシン油エアゾル)


 マツバノタマバエ

概要

幼虫はアカマツ、クロマツ、タイワンアカマツなどの針葉基部に潜って虫こぶ(ゴール)を作る。被害葉は生長が止まり、落葉が早まる。被害が進むと林全体が褐変する。被害が2〜3年間続くと生長が著しく阻害され、枯死することもある。

被害

卵は初期の針葉の葉間にかためて産みつける。ふ化幼虫は針葉基部の組織内に潜り込み、虫こぶを作る。一つの虫こぶ内に6〜7頭の幼虫が棲息し、栄養を摂取して成長する。幼虫は10月から翌年1月ごろに虫こぶから脱出して士中に浅く潜り、繭を作る。

マツバノタマバエ虫こぶ内幼虫
マツバノタマバエ虫こぶ内幼虫

幼虫の
生態

幼虫は体長2〜3mm。脚がなく、体は黄白色〜橙黄色。胸部にY字状のもようがある。1年に1回の発生。幼虫態で士中越冬する。春に蛹化し、成虫は5〜7月に羽化する。

防除

防除は、有力な天敵として知られているマツダマヤドリハラビロコバチ、マツタマヤドリコロコバチなど寄生蜂の保護増殖をはかることである。また本虫に対して抵抗性のある松を導入することである。発生の多いときは5〜6月の成虫の発生期をねらって薬剤を地表面に散布する。
登録農薬:有機リン系殺虫剤(MEP乳剤)


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