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第10回 松枯れ防除実践講座のご報告 1日目(座学)

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講座風景

当センターは、松保護士、森林組合職員等を対象に松枯れの適切な防除計画の策定と的確な防除の実施に必要な技術・知識の習得を目的とする松枯れ防除実践講座を平成17年度より実施している。10回目となる平成26年度は9月11日(木)〜12日(金)の2日間長野県南箕輪村において信州大学との共催により行った。

この講座には、全国の松保護士、樹木医、市町村の森林病虫害防除担当者、森林組合職員など総勢110名が参加した。


 

農学部南箕輪キャンパスにおいて、1日目は総合実験実習棟を研修会場とし、13:00当センター小禄専務理事による開会の辞に続き、信州大学農学部中村学部長の開催挨拶、来賓として中部森林管理局角計画保全部長、長野県前島森林づくり推進課長よりご挨拶をいただいた。

 

当センター小禄専務理事

当センター小禄専務理事

信州大学農学部中村学部長

信州大学農学部 中村学部長


中部森林管理局角計画保全部長

中部森林管理局 角計画保全部長

長野県前島森林づくり推進課長

長野県 前島森林づくり推進課長


 

講座では、中部森林管理局松元保全課長より「中部森林管理局における松くい虫防除対策の取り組み」として、管内の被害推移、平成21年度に空中散布を中止し、防除対策の再検討のため、年度毎の被害発生状況をもとに「守るべき松林」の防除線を設定、被害木駆除の徹底、マツノマダラカミキリは林縁・林道沿いなど風の通り道を利用する行動習性を前提に効率の良い地上散布、樹幹注入の実施により一定の効果が見られ、さらに関係自治体との堅密な被害対策の連携が鍵と述べられた。

 

長野県森林づくり推進課の田中係長より「長野県における松枯れ被害と対策について 」、県内において標高800mを超える地点でも被害が発生、マツタケ林への被害など地場産業への影響も懸念される。「年越し枯れ」と「当年枯れ」の混在する地域では特に産卵対象木を特定し適期駆除を行うことが大切と指摘。

平成26年度新たに「更新伐」を導入しアカマツ以外への樹種転換を図り、今後は周辺住民等とのリスクコミュニケーションや安全確認調査などの防除対策(予防)、「松くい虫防除対策協議会」など広域連携による被害対策推進の重要性を強調された。

 

中部森林管理局松元保全課長

中部森林管理局 松元保全課長

長野県森林づくり推進課田中係長

長野県森林づくり推進課 田中係長


 

休憩をはさみ、長野県林業総合センター岡田主任研究員から「高標高地などの寒冷地域でのマツ材線虫病被害対策の難しさ」についてのご報告を受けた。

高標高地における被害の特徴は、被害の進行が遅い、枯損木が1年を通じて発生する、夏の気象条件により枯損木の発生パターンが変わる、かなり標高が高くても持ち込まれた被害材から被害が発生するなどを説明。

被害対策の注意点として、枯損木が同じ所で1年を通じて発生し、被害木が点在し被害拡大が遅いが移動の時間、手間がかかる、マツ林がほぼ連続し感染源がなくならないなどを指摘された。

被害対策は、被害が侵入する危険性が高い所での被害検出精度を高め被害木の丁寧な駆除、守るべきマツ林の選定とマツノマダラカミキリ活動期間に合わせた枯損木の確実な処理の大切さを解説された。

 

「防除対策を実施しても松枯れが防げないのは何故か」について、千葉大学本山名誉教授による特別講演を受けた。

最初に、一部の周辺住民が予防散布された薬剤の飛散によるとする健康被害を訴えた、反農薬活動家グループが一部の学者・医師・評論家、政治家、メディアを利用し、行政に圧力をかけて予防散布を中止に追い込んだ、不十分な防除対策しか実施できなかったことが松枯れの被害増大を招き、周辺地域への被害の拡大をもたらした、ことの3点を指摘された。これらは、2004〜2013年に各地で実施した松くい虫防除で散布された薬剤の飛散に関する研究の成果から導き出された見解である。

激害発生を防ぐ対策として、技術的には、伐倒駆除だけでは松くい虫被害を防げない、予防散布と伐倒駆除の両方が必要、予防散布で大事なことは、残効性を考慮した薬剤と散布回数の適切な選択、散布むらを少なくする、伐倒駆除で大事なことは当年枯れを優先、細い幹や枝条(小枝)を林内に放置しないなど。防除事業の実施主体にあっては、根拠のない健康被害の訴えに惑わされない、反対のための反対活動をしている無責任な反農薬活動家グループの脅迫に屈しない、地元住民の松林を守るという熱意が行政を支持し、自信を与える、松枯れは伝染病なので、松林の所有形態や、行政区分や、地域を超えた連携が必要であることを力説された。

 

長野県林業総合センター岡田主任研究員

長野県林業総合センター 岡田主任研究員

千葉大学 本山名誉教授

千葉大学 本山名誉教授



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