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平成21年度 講義風景<4>
植栽基盤の調査・判定・整備工法
講師:長谷川秀三(ジオグリーンテック(株)代表取締役)
近年、単なる「緑の量的な確保」だけではなく「質的に充実した緑」が求められるようになった。質の高い緑化を行うためには、「緑を支える基盤である土壌」が重要な役割を果たしていることが再認識され、「植栽基盤整備」という専門用語が定着してきた。植栽基盤を理解し、きちんとした品質の緑を造り守り育てる人材を養成するために、「植栽基盤診断士」の資格認定も行われるようになった。今後「重要な植栽や緑の管理」に樹木医とともに大切な資格となっていくと考えられる。
また、植栽に良質な客土を容易に購入できた時代は過ぎ、客土を購入せずに現場の土を改良して利用してくようになってきた。これは、山からの客土採掘が自然破壊を引き起こすうえ、入れ替えた残土が建設廃材となるため、ゼロエミッション(現場から出る廃棄物を限りなくゼロに近づける考え方)に反するという背景もあり、この面からも植栽地の植栽基盤土そのものを改良整備して緑化していくようになってきた。
次いで、調査の方法と評価、植栽基盤設計、植栽基盤整備工法について解説。
図7 目標となる植栽基盤の模式断面図
マツ材線虫病の感染発病メカニズム
講師:田畑勝洋(岐阜県立森林文化アカデミー客員教授)
植物病理学における感染発病機構
植物体が病原体と出会っても直ちに感染が起きるものではありません。それは植物体自身にもともと備わっていた抵抗性機構があるからです。例えば、堅くて厚い樹皮をもっているとか、抗菌性の物質をもっているなどです。これを「静的抵抗性」と呼んでいます。
しかし、この「静的抵抗性」がいったん突破されると病原体の侵入に対する植物側の生体防御反応が誘導されます。つまり、マツ材線虫病で説明しますと、病原体であるマツノザイセンチュウはマツの厚くて堅い樹皮の壁にはばまれてマツ樹体内に侵入できません。これがマツの「静的抵抗性」です。しかし、マツノマダラカミキリ成虫の後食によって樹皮という物理的な障壁が破壊されて、マツノザイセンチュウは容易にマツに侵入し、マツ材線虫病に感染・発病してしまいます。
次いで、マツ樹体内でのマツノザイセンチュウの増殖、マツの生体防御反応などについて解説。
土壌の診断
講師:田中 永晴(森林総合研究所立地環境研究領域チーム長)
土壌断面層位の模式図 (林野土壌の調べ方とその性質 1982) |
自然土壌としての森林土壌
山の樹木は生まれたときから枯死するまで、その場所の自然土壌の環境下で生きてゆくことになる。土壌環境がその樹木の生育に適していれば良く成長する。また、人工的な改変はない自然土壌であるが、樹木が成長する過程で、根の成長や林地へ葉が落ちることで土壌動物や微生物等の生物活動も活発化し、土壌の性質は徐々に変化してゆく。この変化は必ずしも樹木にとって有利なものばかりではないが、樹木と関連が深い性質といえる。樹木にとっての生育に適した土壌環境の手本として自然土壌の性質を知ることは有益であり、その情報から造成地等の土壌を樹木の生育適地の自然土壌の性質に近づけることが重要である。
土壌の基本的な物理的環境、化学的環境および土壌診断調査の方法等について解説。