HOME > 緑化技術情報 > 緑のリサイクル技術<目次> > 根株移植 Page3

緑化センターについて

緑のリサイクル技術

2)根株移植の試験植栽

(2)大規模宅地造成地の緑化における既存樹木の根株移植手法

東京都八王子市の八王子ニュータウンで実施された根株移植では以下のような結果が得られた。

根株移植の方法

伐採後にパワーショベルに挟み込みタイプのアタッチメントを取りつけて根株を掘り起こした。移植場所に準備した植え穴に根株を入れ埋め戻した。移植根株の総数は、1、122本。伐採時期は、1989年1月から5月まで、掘取り及び植え付けの時期は、同年3月から7月に及んだ。ただし、掘取りから植付けまでの作業は、同日のうちに完了させた。植え付け後、灌水、マルチングなどの管理は全く施さずに放置した。根株は、幹の切り高が30cmと100cmの2つの区分を設けた。

根株の活着状況

a.種別の活着状況

ヤマツツジが84%と良好な成嶺を示し、エゴノキが64%、コナラが62%、クリが58%、ヤマザクラが55%であつたのに対して、 シデ類は11%の低い値にとどまった。樹幹の伐採時期や掘取りと植え付け時期の違いを比較してみても、いずれの場合もシデ類の活着は良好ではなかった。

 

b.樹幹径階別の活着状況

幹径が11〜19cmのものが66%で最も高い。ついで10cm以下が63%、20〜29cmが56%となり、幹径が大きくなるほど活者率が低くなる傾向が認められた。

 

c.移植の植込み時期と活者率

4月が70%で最も高く、3月が58%、5月が53%、7月が44%と順に低下した。5月と7月に移植して植え込んだ場合には、根株からの萌芽がすすんでいる段階であり、根系も地上部の植物体の伸張に応じて伸長を始めている。5月と7月の活者率が4月と3月に比べて低いのは、移植に際して根系を傷め、これによって萌芽した枝葉に対する水分供給が不足するため、植え傷みが生じることが主要な原因と考えられる。

さらに、伐採後の移植植付けまでの期間と活着率、萌芽数と伐採後の移植時期、樹幹径階、樹種、生育不良と枯損の原因について検討されている。

まとめ

試験結果から、コナラ、クリ、エゴノキ、ヤマザクラの根株では、60%程度、ヤマツツジでは80%以上の活着率を示した。シデ類においては、根株移植後の活着率が低く、萌芽力についても他に劣る傾向が認められた。樹幹径の大きなものよりも小さい根株の方が活着率が高くなった。しかし、大きな根株の場合には、根株の周囲に自生する植物が根株に付着して移植される可能性があることや、費用が樹幹径の大小により大差ないことから、これらの移植も積極的に行う必要があるものと思われる。

造成地の緑化に際しては、これまで未利用のままで処分された根株を活用できることがほぼ明らかになった。

引用文献 阿江範彦・養父志及夫(1991):大規模宅地造成地の緑化における既存樹木の根株移植手法:日本緑化工学会誌,第16巻,第2号,33-38
(3)根株移植実証試験

このページのトップへ