マツの病気
「松を守ろう」(1998年12月、(財)日本緑化センター)を参考に、マツの主な病害虫(マツ材線虫病以外)について解説します。
葉の病気
葉ふるい病
秋の初めごろから、新葉に黄色〜淡褐色で小型の初期病斑が現われます。翌春になると、病気が急速に進み、病葉は一斉に黄褐色〜灰褐変、萎れて枯れ、激しく落葉します。苗木から成木まで発生しますが、一般に新葉が伸びてくると病気はそれほど目立たなくなり枯れることはあまりありません。しかし、岩手県などの苗畑で大量の苗木が枯れた事例もあり油断はできません。 この病気はカビの仲間(子のう菌類の一種)によって起こされる伝染病で、梅雨ころから秋口にかけて病落葉上に黒色、楕円形でやや盛り上がった菌体が多数現われます。菌体に混じって黒い横線もできますが、岩手県などで発生する菌では見られません。この菌体から胞子が空中に飛散して、松の針葉に感染します。アカマツ、クロマツのほか外国産のマツ類にも発生します。 毎年被害が激しい場合には7〜9月に薬剤散布をしますが、施肥や手入れをおこなって樹勢を強めることが必要です。
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すす葉枯病
5〜6月ごろに針葉の先端部から赤褐変が始まり、次第に拡大して針葉の半分程度まで進むと停止し、基部の健全な緑色部と明らかな境界ができます。患部には多数の微細な黒粒点(菌体)が気孔列に沿って形成されます。病状が激しい病葉は汚灰褐変、萎れて落葉します。 この病気はカビの仲間(不完全菌類の一種)によって起こされる伝染病で、患部に形成された菌体の胞子によって伝染します。苗木から成木まで発生しますが、特にアカマツがかかりやすい病気です。 発病年に冬の低温・乾燥と春先の高温・多雨が重なると広域に発生し、根系の発達不良な個体が発病しやすいともいわれています。またSO2ガスなどの大気汚染によって発生することもあります。 |
赤斑葉枯病(せきはんはがれびょう)
秋、針葉上に周辺が黄緑色で小さな褐色の斑点がみられます。翌春、この病斑は拡大し鮮やかな赤褐色の帯状患部に発達し、表皮が裂けて中から小さい黒粒点(菌体)が現われます。病状は夏から秋にさらに進んで罹病部は赤褐変、落葉しますが、クロマツでは患部と健全部に境界ができてそのまま樹上に残るものもあります。アカマツでは地上に近い針葉ほど発生が目立ちます。
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葉さび病
4〜5月ころに、旧針葉に黄色、小型で袋状の突起物が多数形成され、まもなく針葉は黄褐変、落葉します。袋状物内にできた胞子(さび胞子)は飛散して中間宿主(後述)の葉に感染、発病させ、そこに黄色、粉状物(夏胞子)、次いで黄橙色の隆起物(冬胞子)が多数形成されます。9月中旬ころになると、この冬胞子が発芽して松の針葉に感染します。
この病気はカビの仲間で、さび菌類と呼ばれる菌によって起こされる伝染病です。さび菌類は2種類の植物に寄生して生活するのが特徴で、これらの植物(宿主)のうち病害として重要でない方の植物を中間宿主と呼んでいます。マツ類の葉さび病菌は約20種類ほど記録され、種類によって中間宿主が異なります。主な中間宿主としてはノコンギク・シラヤマギクのほか、キハダ、サンショウ、ヒヨドリバナなどがあります。 主に幼齢木で問題になりますが、時には庭木や盆栽にも発生します。中間宿主を早めに駆除して伝染の鎖を断ち切ることが有効な防除法です。 |