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NGK・GGG共同主催 平成25年度「ゴルフ場の樹木管理セミナー」西日本地区 報告
平成26年2月21日(金)、京都市にある京都産業大学を座学、隣接する京都ゴルフ倶楽部上賀茂コースを実習の会場として、一般社団法人日本ゴルフ場事業協会(NGK)および公益社団法人ゴルフ緑化促進会(GGG)の共催による「ゴルフ場の樹木管理セミナー(西日本地区)」が開催されました。このセミナーは平成23年度より当面5年間実施するもので、ゴルフ場の経営者、支配人、グリーンキーパーの皆様にゴルフ場の緑地機能を高めるための適切な樹木管理への理解を深めていただくことを意図したものです。西日本地区では、マツ枯れの防除、ナラ枯れの防除、広葉樹の管理について理論を学び、マツ枯れ・ナラ枯れの防除方法を実習していただきました。
GGG桜井尚武副理事長による開会の挨拶では、「ゴルフ場の樹木管理に関わる情報提供が本セミナーの目的であること、GGGは地域の緑化に貢献する活動を行うものであり、これまで校庭などの芝生管理に試行錯誤を繰り返し、次第に知識を蓄積してきた。環境保全に対するゴルフ場の機能が明らかになり、地域の環境材として認知されつつある。地域の人たちがゴルフ場に遊びに来る、自然体験するといった、喜ばれる関係を創り出していくことが大切である」ということを力説されました。
来賓の京都ゴルフ倶楽部・船木宏樹支配人からは、「戦後、西日本を管轄する第一軍団本部が軍人のレクリエーションにゴルフ場を造ることを考えた。候補地の所有者の1つであった上賀茂神社は大反対し、総司令部のマッカーサーから中止命令が下される。その後、軍政官のH.C.シェフィールド氏が東奔西走し、紆余曲折を経て完成をみた。京都大学演習林も敷地の一角を占める当ゴルフ場の豊かな自然林を大切にしながら、設立以来今日まで取り組んできた」とのご挨拶がありました。
公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長
京都ゴルフ倶楽部 上賀茂コース 船木支配人
(独)森林総合研究所東北支所 中村グループ長
座学の最初の講義は「ゴルフ場を想定した松くい虫被害対策」をテーマに、中村克典氏(森林総合研究所東北支所生物被害研究グループ長)から、「松くい虫被害とその防除手法」、「ゴルフ場のマツの松くい虫対策」、「常識的な防除を着実に」という構成による解説をしていただきました。松くい虫被害対策において大切なことは、先例のない取り組みや画期的な新技術をあれこれ試すことではなく、常識的な防除手法を着実に実施すること、そして、これを「当たり前のこと」にしているのは、実務担当者の方々の正確な知識に基づく的確・冷静な判断と高度な技術レベルなのである、と結ばれました。
(独)森林総合研究所関西支所 衣浦グループ長
公益財団法人日本花の会 和田主任研究員
2番目の講義は「ナラ枯れの現状と対策について」というテーマで衣浦晴生氏(森林総合研究所関西支所生物被害研究グループ長)より、「ナラ枯れの被害状況」、「ナラ類集団枯死の原因と枯死メカニズム」、「カシノナガキクイムシの生活史」、「カシノナガキクイムシの繁殖と樹木との関係」、「対策と新たな防除技術」、「被害拡大の背景」を丁寧に解説していただきました。
都市近郊の里山のコナラやクヌギの林は、数百年以上も薪炭生産に使われ続けてきた林であり、15〜30年周期で順々に伐採・収穫する畑に近いもので、天然の林ではない。ところが、1950年代のエネルギー革命以降に必要がなくなり放置されて全部大径木になった。さらに老木を残して本数を減らす公園型整備(見た目にきれいな林を作る)も行われている。菌を運ぶカシノナガキクイムシは大径木でよく増えることから、こういった里山の変化は、すべてカシノナガキクイムシの繁殖に有利に働いている、という被害発生の背景を説明されました。
3番目の講義は「広葉樹の管理」について、和田博幸氏(公益財団法人日本花の会主任研究員)から、「樹木を取り巻く環境」、「日本の春を彩るサクラの風景」、「サクラ類の樹勢衰退の要因」、「樹木の診断」、「樹木を元気で安全なものにする」をわかりやすく解説していただきました。サクラ類が好む生育環境は、日当たりが良く、水はけがよく適度に湿り気があり、肥沃な場所。樹勢衰退の主因は、てんぐ巣病、コスカシバなどの病虫害、過密な植栽、不適切な位置での剪定など、とくに大枝の切除は要注意と強調されました。
各50分、3講義を連続して13時過ぎまで長時間の座学となりました。
大学食堂での遅い昼食の後、座学の会場からマイクロバスで上賀茂コース9番ホールに近接する実習場所へ移動し、参加者は4グループに分かれて各々20分程度で、1)ナラ枯れ予防の樹幹注入、2)マツノマダラカミキリ駆除の伐倒くん蒸(薬剤)、3)マツ枯れ予防の樹幹注入、4)マツ枯れ予防の土壌灌注の実習メニューを同時進行で進めました。あわせて、前日被害材から取り出したマツノマダラカミキリ幼虫、材内に作られた蛹室(ようしつ)や成虫の脱出孔の確認をしていただきました。
1)ナラ枯れ予防の樹幹注入実習
2)マツノマダラカミキリ駆除の伐倒くん蒸実習
3)マツ枯れ予防の樹幹注入実習
4)マツ枯れ予防の土壌灌注実習
一般社団法人日本ゴルフ場事業協会 大石専務理事
実習終了後、NGK大石順一専務理事より閉会のご挨拶をいただきました。「ゴルフ場は100haもの大面積を1日わずか200名程で占有するとても贅沢な使い方という声も聞かれる。一方、ゴルフ場の機能、環境を保全し生きものの生息地となっていることについて、近隣の人たちから少しずつ理解され始めている。ゴルフ場は儲からないと管理も十分できない。皆さん一人ひとりが新しいゴルファーを育て増やす、新しいゴルファーがゴルフの楽しさとゴルフ場の環境の素晴らしさを知り、さらに新人の獲得をめざす。そのような人と人の関係作りに心がけてほしい」と期待を述べられました。
今回のセミナーには西日本地区から87名のご参加をいただき、そのうちゴルフ場スタッフは約3割近くを占め、午後4時まで熱心に研修されました。
実習の実施にあたり、石原バイオサイエンス(株)、住化グリーン(株)、保土ヶ谷アグロテック(株)、大同商事(株)、サンケイ化学(株)様より資材提供と専門職員の派遣にご協力をいただきました。なお、当センターは本セミナーの企画・運営に協力致しました。
座学の様子