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NGK・GGG共同主催 平成25年度「ゴルフ場の樹木管理セミナー」東日本地区 報告
東日本地区の座学風景

座学の様子

 平成25年11月18日(月)、つくばみらい市にある茨城ゴルフ倶楽部を会場として、一般社団法人日本ゴルフ場事業協会(NGK)および公益社団法人ゴルフ緑化促進会(GGG)の共催による「ゴルフ場の樹木管理セミナー」が開催されました。このセミナーは平成23年度より当面5年間実施するもので、ゴルフ場の経営者、支配人、グリーンキーパーの皆様にゴルフ場の緑地機能を高めるための適切な樹木管理への理解を深めていただくことを意図したものです。今回はマツ枯れ防除、樹木の病害の防除、樹林の密度管理について理論を学び、マツ枯れの防除方法を実習していただきました。

 

 GGG桜井尚武副理事長による開会の挨拶では、配布した資料「生きものの里山をめざすゴルフ場ガイドライン」(GGG発刊)は、様々な生きものの営みをゴルフ場が支えている姿を示すもので、ゴルフ場に対する社会一般の抱いている負のイメージを払拭することをねらいとしていること、その役割を十分に発揮させるためには、樹木の健全な管理を通してゴルフ場の環境を整えることが大切であることを力説されました。

 

 来賓の茨城ゴルフ倶楽部・倉持総支配人からは、上田治氏にコース設計を依頼し、36ホールにバラエティを持たせ、自然な環境・地形を活用するため、美観を重要視し、マツやスギ一本の配置に配慮したこと、今年10月に行われた日本オープン選手権では4日間に雨天による1日延長を加え、東コースにおいて無事トーナメントを完遂できたことへのお礼など、ご挨拶がありました。

 

公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長

公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長

茨城ゴルフ倶楽部 倉持総支配人

茨城ゴルフ倶楽部 倉持総支配人


 

(独)森林総合研究所東北支所 中村グループ長

(独)森林総合研究所東北支所 中村グループ長

(独)生物資源研究所 金子非常勤研究員

(独)生物資源研究所 金子非常勤研究員

元(独)森林総合研究所 藤森氏

元(独)森林総合研究所 藤森氏

 

 

4グループに分かれ4種類の実習メニューを同時進行

4グループに分かれ4種類の実習メニューを同時進行

 座学の最初の講義は「ゴルフ場を想定した松くい虫被害対策」をテーマに、中村克典氏(森林総合研究所東北支所生物被害研究グループ長)から、「松くい虫被害とその防除手法」、「ゴルフ場のマツの松くい虫対策」、「常識的な防除を着実に」という構成による解説をしていただきました。松くい虫被害対策において大切なことは、先例のない取り組みや画期的な新技術をあれこれ試すことではなく、常識的な防除手法を着実に実施すること、そして、これを「当たり前のこと」にしているのは、実務担当者の方々の正確な知識に基づく的確・冷静な判断と高度な技術レベルなのである、と結ばれました。

 

 2番目の講義は「樹木の病害の防除」というテーマで金子繁氏(生物資源研究所非常勤研究員)より、「樹木病害の原因、発生と環境条件」、「病害を防ぐ要点」、「薬剤防除」、「代表的樹木の病害例」を丁寧に解説していただきました。

 樹木の病害を予防する要点は、発病の必須要因である、病原(主因)、宿主(素因)、環境(誘因)に働きかけて、病気の発生を阻止し、軽減することであり、病害の薬剤防除は、発病前(予防)と発病後(治療)に対処するものであるが、樹木の病害の防除はなんと言っても予防であることを説明されました。

 

 3番目の講義は「ゴルフ場の樹林の密度管理」について、藤森隆郎氏(元森林総合研究所森林環境部長)から、「流木密度と樹木の形質の関係」、「樹冠長率と形状比との関係」、「ゴルフ場樹林の望ましい密度管理」「間伐の仕方」をわかりやすく解説していただきました。ゴルフ場の樹林密度の管理技術は、すなわち樹冠管理の技術であり、例えば、樹高が高くなると冬の日陰は遠くへ長く伸びてなかなか雪が溶けない、そこで樹冠長率を考慮しながら樹木の頭を抑え、枝打ちをすることが大切であると強調され、3講義通した13時40分過ぎまで長時間の座学となりました。


 各50分、3講義を連続して13時過ぎまで長時間の座学となりました。

 

 クラブ食堂での遅い昼食の後、座学の会場から東コース1番ホールに近接する実習場所へ移動し、参加者は4グループに分かれて各々20分程度で、1)樹幹注入(マツ枯れ予防)、2)土壌灌注(マツ枯れ予防)、3)伐倒不織布製剤(ボーベリア菌)、4)伐倒くん蒸(薬剤)を同時進行で進めました。あわせて、あらかじめ被害材から取り出したマツノマダラカミキリ幼虫と成虫(標本)、材内に作られた蛹室(ようしつ)や成虫の脱出孔の確認をしていただきました。


マツ材線虫予防の樹幹注入実習

1)マツ材線虫予防の樹幹注入実習

マツ材線虫予防の土壌灌注実習

2)マツ材線虫予防の土壌灌注実習


ボーベリア菌不織布製剤による駆除実習

3)ボーベリア菌不織布製剤による駆除実習

マツノマダラカミキリ駆除の伐倒くん蒸の実習

4)マツノマダラカミキリ駆除の伐倒くん蒸の実習


 

 実習終了後、再びコンペルームへ戻り、NGK大石順一専務理事より閉会のご挨拶をいただきました。本日の座学と実習の内容は、参加者皆様のゴルフ場における日頃の樹木管理にただちに役立てていただけるものと確信している。全国のゴルフ場のおよそ270万haの芝生や樹林は、230万世帯の消費する発電量に伴い発生するCO2と同量を固定している。全国各地にゴルフ場があるからこそ、環境が維持されている、このことにみなさんもっと誇りを持ってほしい、ゴルフ場の緑化機能を高めることを目的とするセミナーは今後も継続し、コース管理で発生する有機性廃棄物のコンポスト化などもテーマとしたい、と抱負を述べられました。


 閉会後、特別に日本オープンのコース管理に従事された滝島総括顧問および富永グリーンキーパーに参加者からの質問にお答えいただく時間をとりました。

 

一般社団法人日本ゴルフ場事業協会 大石順一専務理事

一般社団法人日本ゴルフ場事業協会 大石専務理事

茨城ゴルフ倶楽部の滝島氏、富永氏

茨城ゴルフ倶楽部の滝島氏、富永氏


 

 今回のセミナーには東日本地区から約110名の皆様のご参加をいただき、そのうちゴルフ場スタッフは約7割近くを占め、午後4時過ぎまで熱心に研修されました。


 実習の実施にあたり、ゾエティス・ジャパン(株)、石原バイオサイエンス(株)、井筒屋化学産業(株)、サンケイ化学(株)様より資材提供と専門職員の派遣にご協力をいただきました。なお、当センターは、本セミナーの企画・運営に協力致しました。

 

リンク 平成25年度 東日本地区の開催案内とプログラム

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