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緑化樹木の樹勢回復技術(診断編)
調査手順と診断方法
それでは調査の手順を説明します。
調査に出かける前に、次に示すいくつかの基本的な準備をしておきます。
調査の準備
→ 目的を明らかに
→ 必要な調査項目の検討
→ 作業の程度、時間、人数
→ 樹木の位置は方眼紙に記入
→ 方位磁石やクリノメーターを携帯
概況調査
この調査では、右に示す概況調査票・1枚目(→ 概況調査票PDF)にもとづき、必要な情報を整理します。樹種名、調査対象木の状況、気象データ、生育環境などです。
調査日、所在地、整理番号は、忘れずにその場で正確に記入します。写真は何枚目に何を写したのかがわかるようにします。
主な調査項目を説明します。
樹種の同定
樹木は季節に応じていろいろな姿を見せます。例えば、葉のない時期の落葉樹は、同定に利用できる情報が根元近くの落ち葉、樹皮、樹形、冬芽などに限られます。季節に応じて注意深く樹木を観察し、冬芽による落葉樹の判定図鑑などで見慣れておくことが必要です。
「冬の落葉樹図鑑」(信濃毎日新聞社、1981年)、「樹皮ハンドブック」(文一総合出版、2006年)など参考となる文献を利用すると理解が深まります。
温量指数
植物と温度の関係を示す数値に、温量指数があります。これは暖かさの指数ともいい、数値の大きさにより、植物の生育範囲が決まります。
開花や成熟に必要な温度の基準を5℃として、月平均気温5℃以上の月について、各月の平均気温から5℃を差し引いて一年間積算した値です。
反対に寒さに制限される植物の分布を説明する、寒さの指数があります。
周辺樹木との関係
他の樹木から受ける被圧の程度を判断します。樹冠の枝葉のうち、どの程度の量が影響を受けているかを観察します。それを次に示す5段階で評価します。
被圧の程度
1:影響なし
2:わずかに影響を受ける
3:影響を受ける
4:かなり影響を受ける
5:深刻な影響を受ける
写真左端のエノキが右隣のエノキに被圧を受けている状況がよくわかります。この場合、被圧の程度は「4:かなり影響を受ける」です。
形状寸法
まず、樹木の形状寸法に使用する主な用語を説明しておきましょう。樹高、枝張、胸高直径あるいは幹周、枝下高などです。
胸高直径は、地際から1.2mの幹の直径です。傾斜地に立っている樹木では、注意が必要です。
樹高の測定
樹高の測定はブルーメライス測高器、クリノメーター、測高稈などを状況に応じて使い分けます。それでは、主な樹高の測定方法を説明します。
ブルーメライス測高器
測定は樹木から15、20、30、40m離れた4地点のうち、樹木の先端が最も見えやすい1地点を選びます。広葉樹の場合、斜め下から見ると実際よりも高く測定してしまいます。
そこで、延長線上の最も高いと思われる所より、少し低い位置に照準を合わせます。横目で振れている針を見て、静止してから針を固定します。選択した地点に相当する欄の数字を読み取り、この数値に目の高さを加えると、樹高になります。
クリノメーター
クリノメーターは、樹木からの距離に関係なく使えます。ブルーメライスと同じ要領で、最も高い枝にねらいをつけてから、針を固定し角度を読み取ります。
枝の真下から立っている位置までの距離を測ります。角度αと距離Lをもとにaを計算します。aに目の高(a=ltanα)さbを加えたhが樹高となります。
測高稈
伸縮式のポールを使って、樹高12m程度までの測定を行えます。ポールは、ゴムの摩擦で支えられています。伸ばす途中で先端が枝に当たって下がることや、古くなると支持力が弱まり下がることもあるので、読む前に確認します。
直角二等辺三角形の紙を使って、樹高を測定できる簡単な方法もあります。直角二等辺三角形を地面と樹木との間で水平、垂直に保ち、直角二等辺三角形の斜辺の延長線上に最も高い位置をとらえます。立っている位置から樹木の真横までの距離を測り、これに目の高さを加えれば、樹高となります。
胸高直径または幹周
地上部から1.2mの高さで測定します。測定したい高さで幹が分岐している場合は、幹のふくらんだ部分を避けて少し下の位置で測定します(写真下左)。
測定部位に膨らみやこぶがある場合も同じです。
根元で株立ちとなった樹木の場合は、全体の太さを根元周囲で測定します。
株立ち木の株数と胸高周囲
分岐した幹の数を数え、直径5cm以上の幹について周囲の長さを測定します(写真下右)。
枝下高
正常に生育している幹から分岐した大枝で、最も低い位置にあるものの付け根の高さを測定します。
根元周
根元周の測定位置を説明します。
根から幹に移行する部分、具体的には、幹から下がって来て湾曲する一番大きい所です。通常、筋状の隆起がみられます。
境目がはっきりしない場合は、地際から20cmの高さで測定します。
枝張
樹冠の大きさの短径と長径を測定し、その方向を記録します。
複数の樹木が隣接している場合、少し離れた場所から樹冠の重なり具合を観察して判断するとよいでしょう。
樹齢とその根拠
樹齢を推定するのは大変困難です。通常は、その樹種の樹勢や周辺の環境を考慮しながら平均的な年輪幅を推定して、それを基準におおよそ算出します。
あて材
広葉樹は被圧されると光のある方へ幹を曲げ、枝を伸ばします。重心が移動した樹木は、体を起こそうとします。髄の位置が中心より傾斜した側にずれています。つまり、傾斜側とその反対側で成長幅に差があります。この体を起こそうとした側の成長部分を引っ張りあて材と呼びます。あて材を形成している側は、セルロースが長く、引っ張りに強い材となります。
概況調査票(2枚目)では、さらに根元の状態、樹木の状態、視認性なども調べます。