「宝くじ松」植栽が10万本突破!
宝くじ松とは
日本では多くの松林がマツ材線虫病によって失われています。日本緑化センターでは、(一財)日本宝くじ協会の助成を受けて、「松の緑保全のための宝くじ松配布・植栽事業」を行っています。
これは、全国の松原の再生を図るとともに、マツの保護育成技術の普及啓発を目的とし、松林の再生活動を行う団体に松の苗木代金を助成するというものです。宝くじの収益による事業ですので、植えられた松は「宝くじ松」と呼ばれています。
日本の松の緑を守る会と宝くじ松
この事業は、(社)日本の松の緑を守る会注1)(以下、「守る会」)が、昭和60(1985)年に(財)日本宝くじ協会からの補助金を受けて開始した「宝くじ松による松の名所・史跡の復元と増殖事業」が元になっています。その後、平成15(2003)年の守る会の解散に伴い、日本緑化センターが事業を引き継ぐ形で、これまで実施しています。
昭和60年当時は、「松くい虫」による枯死被害が急速に拡大して、山林だけでなく天然記念物に指定された松など、貴重な名松が数多く失われていました。守る会では、「日本の名松100選」(1983)や「白砂青松100選」(1987)の選定を行うなどのほか、宝くじ協会による「宝くじ松」、ロータリークラブの有志による「ロータリー松」、民間企業による「宝酒造の松」や「フジッコ松」などの助成により、全国で植樹活動を行っていました。
当時の宝くじ松の植栽地は、海岸だけでなく、皇居外苑、哲学の道(京都)をはじめ、城跡や神社仏閣、公園など、全国の松の名所にも展開していました。植えられたのはクロマツ、アカマツの成木が多く、仕立物もありました。平成14年度までの18年間で、45都府県、413か所、2万8,283本が植栽されています。
当センターの宝くじ松が累計10万本を突破
平成16(2004)年から、当センターにおける宝くじ松植栽事業が始まりました。開始当初は、記念樹としての成木単木植栽などもありましたが、現在は原則として抵抗性マツ苗による面的な植栽を推進しています。また、松に関心をもってもらうため、植樹祭などで多くの人に参加をいただくことも目的のひとつとしています。
今年度(平成30年度)は、福島、新潟、石川、福岡、佐賀の5県7団体がイベント等を開催し、5,170本の松苗を植栽しました。
これにより、今年度までの累計は40道府県、172か所、10万4,058本となり、事業開始から15年目に、植栽本数が10万本に達したことになります。
幣の松原での植樹報告
今年度の実施箇所のひとつ、福岡県糸島市幣の浜は、玄界灘に面する弓張形の砂浜の海岸線で、玄海国定公園や防風保安林等の指定を受けています。
延長4kmにわたる松林は幣の松原と呼ばれ、白砂青松100選にも選ばれる景勝地でしたが、平成24(2012)年頃、マツ材線虫病により壊滅的な被害を受けました。
この幣の浜で、糸島市のアダプト事業(松林の里親制度)の登録団体のひとつとして松林の再生・保全に取り組んでいるのが、市民団体のNPO里浜つなぎ隊(山香月代表)です。平成28年度から本事業の助成を開始し、以降、毎年1,000本の松苗の植栽を行っています。
第3回目となる今年度の植樹会は、平成31年1月13日(日)に行われました。
主催者である里浜つなぎ隊の発起人・渡邊美穂氏の挨拶から始まり、苗木の植え方の説明の後、約80名の参加者により抵抗性クロマツ1,000本が植えられ、1本1本しっかりと支柱にひもで結束されました。
写真1 植樹の様子
当日は、発起人の渡邊氏を筆頭に、小さなお子さんを連れた若いご夫婦の参加が多くみられ、住みよく、誇りに思える場所を自分たちで再生し、子どもに伝えていこうとする強い思いが感じられました(写真1)。
参加者に参加の動機を伺うと、
「子どもに植樹を体験させたかった。なかなかこのような機会はないので」。
「里山の植樹活動を行っている。相互扶助の気持ちから他県から参加した」。
「糸島の海が好きだから」。
などと話されました。
また、植樹祭を何で知ったかをお尋ねしたところ、インターネットのフェイスブックとのことで、SNSは情報発信源として有効なツールであることを再認識しました。
幣の浜では5年前から国やボランティア団体による植樹が進んでいて、今後は育成や保全が課題になるとのこと。今後、さらなる市民力の発揮が期待されます。
福岡県糸島市での植樹イベントにて、10万本を祝う横断幕とともに記念撮影
写真提供:NPO里浜つなぎ隊
5月8日は守る会が制定した「松の日」です。
今年は新元号でその日を迎えます。気を引き締めて、今後も松や松林の保護育成について考えていきたいと思います。
「宝くじ松」植栽事業について(マツ再生プロジェクトホームページ)
宝くじ松植栽場所を示す看板とラベル
「宝くじ松」植栽場所には、植樹の趣旨と当センターならびに宝くじ協会の寄贈であることを示す表示板を設置している 写真提供:浦共有財産権利者組合