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 高田松原再生講座(第4回)報告

平成30年(2018)2月17日(土)、岩手県陸前高田市コミュニティホールにおいて、NPO法人高田松原を守る会一般財団法人ベターリビング一般財団法人日本緑化センターの3組織共催による高田松原再生講座(第4回)を開催しました。

 

会場の様子

 


ベターリビング 東ヶ崎グループ長
開会の挨拶では、(一財)ベターリビング・東ヶ崎 住宅部品評価グループ長が、

「ブルー&グリーンプロジェクトを通して育てているクロマツ苗木を、2017年から松原に植え始め、引き続き植栽と保育のお手伝いをさせていただきたい」

と伝えられました。

高田松原を守る会 鈴木理事長
次に主催者を代表して、NPO法人高田松原を守る会の鈴木善久理事長が、

「当会では残った砂浜からハマナス、ハマエンドウなど海浜植物を一時避難させている。今日学んだことを活かし、市民の皆様の参加を得て、海浜植物の復元にも力を入れながら、松原再生を着実に進めたい」

と述べられました。

日本緑化センター 瀧理事
続いて、当センター・瀧理事より、

「平成29年度の活動報告」を行いました。

 

平成29年度の活動内容

 

平成29年度は8つの活動を進めました。


1)小友町での試験植栽(3年目)

 

小友町に松原の植栽基盤に使う同じ土を1m盛土して、アカマツとクロマツの苗木を植えました。試験の目的は、土の締まり具合による根の伸びや排水不良への影響を確認することです。風の影響を均一にするため、防風柵で囲い、苗木1本ずつに衝立(竹簀)を付けます。試験区Aは重機で締め固める、Bは重機で締め固めた後表層を耕耘、Cは普通に盛る(重機による締め固めなし)という3タイプです。昨年11月で、根の生育調査を終了、試験成果は松原の植栽基盤造成、苗木植え付けに活かされています。

 

試験植栽地平面図

第3回調査時(2年半後)の生育状況比較

 

土の締め固まったA区から軟らかく盛ったC区について、地上部の成長量、根の深さに顕著な差が現れています。

 

2)松原での試験植栽

 

試験植栽地平面図

松原試験地図

 

2016年10月、松原の海側にクロマツ、陸側にアカマツを植え、半数は秋植え(ピンク色)、残り半数は2017年春植え(白)です。さらに、大きめのクロマツ苗(緑)も植えています。これは、松原由来のマツ植栽の支柱を試験するものです。
このクロマツのAとDの根を調べた写真を次に示します。

 

試験植栽地平面図試験植栽地平面図

クロマツ 左:2016年秋植え 右:2017年春植え (調査2017年11月21日)

 

Dは2016年秋植え、Aは2017年春植えです。11月に掘り上げたところ、秋植えは根鉢周りに根の量が多く、春植えは根の垂直方向への伸びが顕著です。このため、市民による植樹エリアの植栽は春植えが望ましいと考えます。

 

3)市民による植樹計画(3年間)

 

試験植栽地平面図

市民による植樹計画(3年間)

 

海側はクロマツ、陸側はアカマツを植える計画です。クロマツ植栽ゾーンの中に細長く市民による植樹を行います。3年間で2haを植え、2017年は、3回の植樹を行いました。

 

試験植栽地平面図 試験植栽地平面図

水たまり(左)と割竹施工(右)

 

雨が降るとこのように水はけの悪いところができます。竹を半分に割り、節を抜いて結束した長さ90cmの竹筒を埋め込み、水の浸透を良くします。これで根腐れを防ぎます。

    

試験植栽地平面図

間伐計画図


市民エリアには、松原由来のマツ苗およそ600本が植えられます。この600本が間伐にかからないよう配置を考えています。初回の間伐は汀線に平行に3列残して1列を伐採、1伐3残です。2回目は汀線と直交に1伐3残、もしくは比較的成長の悪いものを選んで伐採します。もし、由来のマツが伐採列にかかった場合、隣の列の樹木を伐採します。由来のマツが将来的に自然に配置されるよう、このように分散させて植えることにします。

 

試験植栽地平面図

静砂垣の設置

 

高田松原には防風垣が設置されていますが、ほとんどが汀線と並行(東西方向)しているため、汀線と直行(南北方向)に柵(静砂垣)を試験的に5列設置しました。

 

試験植栽地平面図

雑草の繁茂

 

このように、植栽の当年にも沢山の雑草が生えてきます。次年度は、新たに植える区域と昨年植えた区域の除草を行います。保育作業はまず雑草との戦いです。

 

4)抵抗性クロマツ苗の育成

 

試験植栽地平面図

写真 マルチキャビティコンテナによる抵抗性クロマツ苗の育成(2017年11月)

    
山形県の庄内海岸砂防林にある森林組合で抵抗性クロマツ苗(種子は大分県産)をマルチキャビティコンテナと呼ばれる容器(1枚のトレーで40本を育てる)で育てています。これは次年度に植栽する予定の苗木です。

 

5)樹脂道によるマツ苗の判定
松原由来のおよそ600本のマツ苗の判定を進め、松原への植栽等に役立てます。

 

6)みんなで竹簀(たけず)をつくる
竹簀は強風から苗木を守り初期の生育を助け、雨水を効率良く地中へしみ込ませて苗木の乾燥を防ぎます。竹簀は主風方向の北西向きに立て、今年2月時点で苗木はほぼ全数生育しています。2018年2月現在で竹簀は9,800枚も作られており、目標の1万枚まであと僅かです。

 

7)市民・保育ボランティア向けの「高田松原再生講座」
高田松原の歴史、文化、環境、地元とのつながりについて学び、松原再生活動のエネルギーを持続し、次世代へ再生活動を継承することを目的に、本講座を毎年1回行う予定です。
講座を通して、市民の皆様の松原に対する一層の理解と、今後始まる松原保育活動の核となるボランティアを育てます。

 

8)「わたしの高田松原」作品募集
第1回の作品募集には、絵画、絵手紙、作文、短歌、詩、俳句など107作品の応募があり、作文を書いた気仙中学校の生徒など24人が、第3回再生講座の場で表彰されました。第2回の表彰は、第4回再生講座当日に行われました。将来、松原のどこかに恒久的に作品を設置することも考えています。

 

市民による松原再生活動を持続させるために、これからは、さらに2つのことに力を入れて行きたいと思います。
岩手県、宮城県、福島県の海岸林再生に関わる団体とネットワークを形成し、連携を図ることが高田松原を含め各県の海岸林再生エネルギーを持続する上で大切となります。この考えから、本日は岩手県釜石市の根浜海岸で再生活動を進めているグループの廣田さん本講座にお招きし、お話を伺いました。
保育活動への参加を促すために、松原を複数の作業区画に分けてさまざまな団体・企業等の参加を得る(アダプト方式)ことが考えられます。第1段階は、まちづくりプラットフォーム参加組織に保育活動への参加を呼びかける、第2段階として、陸前高田市、大船渡市、住田町の気仙地域の企業等に働きかけることを考えています。

 

 


広島工業大学 岡氏
 
その後、講演に移り、 広島工業大学環境学部地球環境学科准教授の岡浩平氏から
「海浜植生の復元」


根浜地区海岸林再生実行委員会共同事務局の廣田一樹氏から
「釜石市根浜海岸の松原再生の現状とこれから」


森林総合研究所東北支所の主任研究員・野口宏典氏から
「盛土に植栽したクロマツの根系成長と土の硬さの関係」
について解説いただきました。

根浜地区海岸林再生実行委員会共同事務局 廣田氏
 

森林総合研究所東北支所 野口氏

 

この後、「第2回 わたしの高田松原」作品コンクール入賞作品の発表が行われ、応募作品160点から、美術部門(絵画、絵手紙)18点、文芸部門(短歌、俳句、川柳、詩、作文)39点、合計57点の作品が入賞し、再生講座の場で表彰されました。

 

続いて、「実演・松原をきれいにする"竹ぼうき"をつくろう!」が行われ、高田松原を守る会・小山副理事とボランティアの原野さんの指導により、3種類の手作り竹ぼうき製作が実演されました。竹ぼうき作りは、竹簀と同様に、今後守る会の作業工房で製作が始まります。

 

コンクール応募作品の展示

 

コンクール受賞者の表彰

 


竹ぼうきづくり体験

 


 

最後に、高田松原を守る会・千田副理事が閉会の挨拶を行い、約100名にご参加いただいた講座を終了しました。


この講座は、毎年1回行う予定です。

 

リンク 第4回講座の開催案内とプログラム

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