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緑化樹木供給・技術情報

価格情報<平成25年度>

トピックス・ 樹木のもたらす6つの便益

 

ホワイトバークパイン

図1 全米樹木便益計算機ウインドウ

 

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図2 計算結果

米国Davey Tree Expert社とDavey Tree Expert社に考案された樹木のもたらす6つの便益をドルに換算する全米樹木便益計算機(National Tree Benefit Calculator:NTBC)を紹介する。

 

まず、郵便番号ないし全米のクライメイトゾーンマップから樹木の位置を選ぶ。ゾーンマップは北部から中西部まで16地区に分けられ、例えばミネアポロリスのある中西部を選ぶと、図1のウインドウが開く。

 

ここで樹種(プルダウン・メニューから選ぶ)、樹木の直径(0〜45インチの範囲)、樹木周辺の土地利用の3項目を入力する。土地利用は、単一世帯住居、複数世帯住居、小規模商業地区、工業ないし大規模商業地区、公園ないし空閑地の5区分となる。

 

例えば、ユリノキ(Tree, Tulip)、20インチ(約51cm)、単一世帯住居と入力し、計算キーをクリックすると、計算結果が図2のように表示される。

 

円グラフの表示は時計回りに、暴風雨抑制65.13ドル、CO2削減7.64ドル、大気浄化12.74ドル、天然ガス節約35.53ドル、電力節約19.61ドル、資産価値増加60.24ドルの6項目について樹木の便益がドル換算される。この20インチのユリノキは1年間に全体で201ドル相当の利益をもたらす。

樹木の有する幾つかの機能は十分に評価できる一方で、計量化が難しいものもある。

樹木の特殊な空間的位置、気候、人とインフラとの相互関係は非常に変わりやすく、正確な計算ははるかに難しくなる。

 

ここに示す計算結果は、都市の街路沿いに植栽された樹木のもたらす利益の一般的な計算であり、樹木の長期に渡る維持管理に関連する費用は計上していない。もしこの樹木が管理され25インチまで成長した場合、年間もたらされる利益は254ドルとなる。これら6項目の詳細な説明は、表1のように示される。

 

このNTBCを使うことにより、誰でも樹木のもたらす利益の近似値を計算できる。このツールは2006年に米国農務省森林局が開発した、i-Treeと呼ばれる都市林を分析し利益を評価する一連のソフトウエアの1つ、i-Tree Streetsを基礎とする。

樹木の位置、樹種、樹木サイズの最小限のインプットにより、ユーザーは年間の樹木がもたらす環境的、経済的価値を理解することができる。NTBCは簡単で、操作しやすく、科学的な正確な価値量の計算というよりも、コミュニティにおける樹木の価値を理解することを出発点としている。

 

i-Treeシリーズはi-Tree Eco(都市林全体の画像を提供)、i-Tree Streets、i-Tree Canopy(樹木などによる被覆を推定)など6種類の分析ツールがある。その他に、i-Tree Species(最適な樹種を選定)、i-Tree Pest Detection Module(病虫害の診断)など3種類のプログラムも提供されている。

 

表1 樹木の便益に関する6項目の詳細解説(ユリノキ、直径20インチの場合)



ユリノキは今年1年間に暴風雨の流去水2,403ガロン(約9,095リットル)を遮断する。都市の流去水は、道路や駐車場の表面から化学物質(石油、ガソリン、硫黄、塩分など)を洗い流し、湿地、河川、大洋へまき散らす。表面が不透水性となるほど(例えば、コンクリート、アスファルト、屋上)、汚染物質はすみやかに周辺の水路に流れ込む。飲料水、水生生物、生態系の健全さは、不利な影響を受ける。樹木はミニ貯蔵器として、次のように流去水を制御する。
1)雨を葉、枝、樹皮により遮断し保持する。
2)樹木の根系を通して雨水の浸透や貯留を増やす。
3)降雨が土壌をたたく前に雨脚を緩め土壌浸食を減らす。



単一世帯住宅の前に植えられているユリノキは、1年間に資産価値を60ドル高める。この樹木は、複数世帯住宅、公園、商業施設の樹木よりも、大きな資産価値を有する。不動産業者は、樹木が資産の”カーブアピール”(道路から見た建物の第一印象)を増し、販売価格を高めることを経験上知っている。研究では、マイホーム購入者は樹木が少ないか全くない物件よりも、豊富な家屋に多く支払うことを示している。この計算モデルは樹木の葉表面積(LSA)を資産価値の上昇を決める要素として用いる。樹木の多い(LSAの大きい)家屋は樹木の少ない(LSAの少ない)ものよりも高い価値を有する傾向がある。一般的に樹木は成長期を経る毎にLSAを増進し累積する。ユリノキは今年1年間に249平方フィート(約23.2m2)のLSAを付加し、その後の年数に応じて増え、資産価値はさらに高まる。




ユリノキは、冷房に要する電力258kw/hを節約し、石油や天然ガス消費を36サーム(キロカロリー)削減する。樹木は次の3つの方法によって、気候を穏やかなものとし建物のエネルギー使用を節約する。
1)日陰を作ることは建物に吸収・蓄積される熱の総量を減らす。
2)蒸発散は水を液体から水蒸気に変換するとき、一方で空気を暖める太陽エネルギーを使って、空気を涼しくする。
3)樹木の樹冠は風を弱め、家屋から失われる熱量を減らす(とくに伝導性が高いガラス窓など)。
戦略的に配置された樹木は、家屋のエネルギー効率を高める。夏期に東西の壁に日陰を作る樹木は建物を涼しくする。冬期に太陽が建物南側に当たるようにすると、屋内空間を暖かくできる。



大気汚染は喘息、咳、頭痛、呼吸心臓疾患、あるいは癌を引き起こす重大な健康被害要因である。米国で1億5千万人以上の人たちが住んでいる地域は、オゾンレベルが連邦大気基準を上回っている。今や都市林が次のような汚染の健康影響を緩和できることを知っている。
1)葉を通してオゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄のような汚染物質を吸収する。
2)塵、灰、煙のような特殊な物質を遮断する。
3)光合成を通して酸素を放出する。
4)オゾン産出を減らし気温を下げる。
5)エネルギー使用を減らし、結果として発電所から汚染物質の排出量を削減する。
樹木はそれ自身、地上レベルでオゾン産出の一因となる植物起源揮発性有機化合物(BVOC;Biogenic Volatile Organic Compound)を排出していることに注意すべきである。いくつかの高い排出種(例えば、ヤナギ、ナラ、モミジバフウ)がオゾン軽減に果たす樹木のポジティブな影響を否定するかもしれないが、樹木の環境貢献度の総量は常にこのような否定的側面を上回る。
CO2 ユリノキは大気中の炭素を1,018ポンド削減する。自動車所有者は毎年12,000マイル”平均的な”車(中型セダン)を運転し、約11,000ポンドのCO2を発生させている。ニューヨークからロサンジェルスへの飛行は乗客1人当たり1,400ポンドのCO2を付加する。樹木は2つの方法によって大気中の炭素削減に影響を与える。
1)樹木はCO2を根、幹、枝、葉に隔離(”しまい込む”)し、成長し収穫された後に木材の中に保持する。
2)建物に近い樹木は冷暖房需要を減らし、発電に関連する排出量を減らす。
気候変動との戦いは、世界規模の多面的なアプローチで担われている一方、戦略的な位置に樹木を植える、運転する距離を少なくする、といった各々が如何に自分のカーボン”フットプリント”減らすことができるかを理解することである。

 

  出典: 1) National Tree Benefit Calculator:Casey Trees and Davey Tree Expert Co.
http://www.treebenefits.com/calculator/
    2) USDA Forest Service’s Center for Urban Forest Research:i-Tree - Tools for Assessing and Managing Community Forests, http://www.itreetools.org/

 

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