マツ百科事典
 
和墨の話−冊子「マツに親しもう」より抜粋−
 
 墨の原料となる「すす」には、松煙と油煙があり、松煙で作られる墨を松煙墨(しょうえんぼく)と言います。
 松煙をとるには、マツの生育する山の中で、紙張り障子で囲った小屋にかまどを設け、マツの荒肌にキズをつけ松脂のにじみ出た部分をはつった(そぎ取った)ものを小割にして、燃やし、まわりの障子や天井にたっぷりとついたすす(松煙)を掃き集めます。
 こうして採る松煙は、燃焼温度にむらがあって、粒子の大きさが均一でないことから墨の色に巾があり、重厚な黒味から青灰色に至るまでさまざまな趣きをかもし出します。
今は金網の上に耐火性の布を貼ったものを使う「障子焚き」
 
 マツの木の豊富な地域が古くから松煙の産地であり、和歌山県田辺市にある紀州松煙の堀池さんは、全国に一軒だけの松煙墨生産者です。
 マツ材は四国や和歌山県内から集めた樹脂をたっぷり含むアカマツの肥松材を使い、すすに混ぜる膠(にかわ・動物の骨や皮、腱、腸などを水で煮た液を固めたもの)は、和膠(わにかわ)です。
 すすを集める障子焚(しょうじたき)は、マツ材を一本ずつ、焚がまの中でゆっくりと火が消えないように1日10時間、10日間かけて、およそマツ割木を500kg燃やし、10kgのすすを集めます。火種を絶やさないよ うに燃やすことと、障子小屋の壁についたすすを採るのが大変な仕事です。
焚がまで燃えているマツ割木
 
 
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