平成19年講義イメージ page2
−平成19年度「樹木と緑化の総合技術講座」テキストより一部抜粋−
●目次
ページ
講座名
講師
2
樹木と温暖化ガスの吸収固定
森川 靖(早稲田大学人間科学部教授)
2
土壌の診断
高橋正通(独立行政法人森林総合研究所 立地環境研究領域長)
2
マツ材線虫病の感染発病メカニズム
田畑勝洋(岐阜県立森林文化アカデミー講師)
■ 樹木と温暖化ガスの吸収固定
講師:森川 靖(早稲田大学人間科学部教授)
京都議定書への取り組み
-京都メカニズムによる地球温暖化の抑制-
■ 土壌の診断
講師:高橋正通(独立行政法人森林総合研究所 立地環境研究領域長)
土壌と樹木との関係
樹木にとっては土壌とは、芽生えた場所や植えられた土地の環境であり、生涯にわたりその土壌で生活することになる。そのため、土壌の性質は樹木の生涯を左右する。一方、土壌にとって樹木とは、土壌の性質に影響を与えるものである。日本のように温暖で湿潤な気候における自然植生は「森林」なので、日本の土壌は森林が作ったとも言える。そのため、樹木に適した土壌は自然状態の森林土壌であり、樹木を健全に育てるためには、土壌をいかに森林の土壌に近づけるかが大切である。
この講座では土壌の種類、土壌の基礎的な物理的化学的な性質、樹木の生育に関わる土壌の診断の概要について解説する。
図2 土壌の層位区分と層位の特徴
■ マツ材線虫病の感染発病メカニズム 講師:
田畑勝洋(岐阜県立森林文化アカデミー講師)
植物病理学における感染発病機構
植物体が病原体と出会っても直ちに感染が起きるものではありません。それは植物体自身にもともと備わっていた抵抗性機構があるからです。例えば、堅くて厚い樹皮をもっているとか、抗菌性の物質をもっているなどです。これを「静的抵抗性」と呼んでいます。
しかし、この「静的抵抗性」がいったん突破されると病原体の侵入に対する植物側の生体防御反応が誘導されます。つまり、マツ材線虫病で説明しますと、病原体であるマツノザイセンチュウはマツの厚くて堅い樹皮の壁にはばまれてマツ樹体内に侵入できません。これがマツの「静的抵抗性」です。しかし、マツノマダラカミキリ成虫の後食によって樹皮という物理的な障壁が破壊されて、マツノザイセンチュウは容易にマツに侵入し、マツ材線虫病に感染・発病してしまいます。
ごく少数のマツは、侵入したマツノザイセンチュウに抵抗性を示して生き残り、その性質は子供に引き継がれます。