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樹木は暑さを感じる

(出所:TREES FEEL THE HEAT by MIKE MAY, p.24〜27, WINTER 2001 American Forests)

 

 気象の変化がもたらす様々な結果を、私達は知ることになるだろう。ここで、ご紹介するのは、樹木をどのようにケアしなければならないのか、そして樹木がどのようにやって行くのかについてである。
マイク・メイ 

 昨年の夏、合衆国西部の干ばつに見舞われた森林の650万エーカー(約260ヘクタール)以上が荒れ狂う火災で燃え上がった。黒焦げになったこの土地は、マサチューセッツ州とロードアイランド州を合わせた以上の広さに匹敵する。このような火災は変わり行く世界を象徴しているのかもしれない。その変わり行く世界では、新しい樹木の集団の中で成長していく森林もあれば、草地と化す森林もあるだろう。野生動物が新しい縄張りに侵入して来るかもしれない。更に大規模で破壊的な火災がぱっと燃え上がるかもしれない。全ては気象の変化の産物である。
 気象学者で全米科学学会のメンバーでもあるトーマス・F・マローン氏は次のように語っている。「ここ数百年の間でおそらく最も温暖な時期に我々はいる。」更に、特に二酸化炭素のように化石燃料から生まれた汚染ガスで大気を充満させて、温暖化の引き金を引いたのは我々なのである。森林は、気象の変化によって深刻な災難に見舞われるであろうけれど、樹木がくい止めてくれるかもしれないのである。

 気候というのは常に変化している。気持ちのいい秋の日々が寒い冬に道を譲り、やがて春の心地よい暖かさが訪れる。そして、夏を迎えるべく暑さが始まる。しかしながら気候を研究している人達は、もっと長いスパンの傾向、つまり数十年というスパンで見た気候の変動を捜し求めている。例えば、海洋大気管理局では、106年間に渡る温度を記録しており、2000年の前半の半年はこれまでに記録された中で最も暑い半年ということでグラフのトップを飾った。

 地球の温暖化あるいは気候変動と呼ばれる問題は数十年前に始まったものである。1950年後半、スクリプス海洋学研究所のデビット・キーリングは、人類の様々な営みが地球の大気圏の二酸化炭素の水準を上げているのではないかという問いを発している。キーリングが一年間を通して記録を付けた最初の年である1959年に、彼は、二酸化炭素の水準が100万分の316、言い換えれば約3,000%であることを発見した。ただそう言われてもピンと来ないかもしれないが、二酸化炭素の水準は、紀元前4000年から紀元後1700年まで、260〜280の間を推移していたのである。水準は、人間が大量の化石燃料を燃やし始めてから上昇した。1990年代後半には、二酸化炭素の水準は370を越える。気象学者の中には、2100年までに700になると予想する人もいる。二酸化炭素が温度と関係してくることから問題が発生する。

 私達を取り巻く環境を暖める加熱のサイクルは大気圏を通って入ってくる日光と共に始まる。こうしたエネルギーの一部が、地面や水面に到達して暖める。地球は、吸収した日光の一部を熱として空中に放出する。空中に上昇するこうした熱の一部は、宇宙に流れ出す代りに、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素等の温室効果によるガスにはね返されてしまう。その結果、こうしたガスは、熱の一部を貯留し温室のガラスのような働きをしてしまう。実際、このようなガスがなければ、私達の世界は、華氏60゜(摂氏15.6゜)は涼しくなり、多くの生物が生息できなくなる可能性がある。安定した地球の温度を保つためには地球は吸収する分のエネルギーを放出しなければならない。二酸化炭素のような温室ガスが大気中に増えると、太陽から吸収したエネルギーの逃げる量が減る。その結果、地球の温度が上昇するのである。



(図1)


 科学者は、産業革命の始まり以来30%以上うなぎ登りに増えている二酸化炭素に特に注目している。それ以前は、自然のプロセスの中でガスの創出と消費のバランスが取れていた。動物、植物、そして葉のような自然の腐敗物による呼吸運動が、二酸化炭素を作り出す。そして、日光と二酸化炭素と水を使って、糖分と酸素を生み出す光合成生物が、この二酸化炭素を消費する仕組みになっている。にもかかわらず人間の行動が、こうしたバランスをどうもひっくり返したようである。環境保護庁の地球温暖化に関するウェブサイトによれば「車やトラックを走らせ、家庭や企業を暖め、工場を動かす為に燃やされるエネルギーが、社会全体の二酸化炭素放出量の80%を占めている・・・」とのこと。
 こうした増加する一方の二酸化炭素が、すでに私達の世界を変えつつある。地球の平均気温は、後半暑い日が長いこと続いた前世紀の間に約一度上昇した。いくつかの推定では、こうした加熱と結果としての氷河の溶解が、大洋の拡張と10インチ(約25p)の海面レベルの上昇をもたらしたと言われている。

つづく


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