マツ百科事典

TSUNAMIとクロマツ林

Tsunami(津波)は日本語がそのまま英語になった言葉。わが国は昔から数多くの津波を経験し、気象庁の津波予報データベースには、これまでに津波を観測した139事例が蓄積されています。

命を救うクロマツ林

昭和35年(1960)、世界最大規模のチリ地震(マグニチュード9.5)による津波は、太平洋を超え22.5時間後に岩手県陸前高田市の高田松原を襲いました。松原は、津波の破壊力で約200mにわたってマツがなぎ倒されました。津波は大人が全速力で走るよりも速く、マツの木にしがみついて助かった人もいて、市街地は松原によって守られ、少ない被害で済みました。津波の後、市内の中学生などみんな力を合わせて、倒れたマツの手入れを行いました。

高田松原

高田松原

一方、日本海側の秋田県能代市にある海岸クロマツ林は、昭和58年(1983)に日本海中部地震(マグニチュード7.7)による大きな津波に見舞われました。ちょうどこの時、修学旅行に来ていた東京都の高校生たちは、海岸から350mあまり離れた施設でお昼を食べていました。大波はまたたく間に建物の方へ押し寄せてきましたが、間にあるクロマツ林のおかげで波のエネルギーが弱められ、高校生たちは間一髪で津波から逃れることができました。

津波被害の断面図

津波被害の断面図

最近では、2004年末に発生したスマトラ沖地震により発生したインド洋津波においても、海岸林が被害を少なくしたことが日本海岸林学会の調査でわかりました。

北太平洋に面している日本列島では、昔からクロマツが力強い防波堤の役割をはたしています。

(出典:「松原の生き物百科」(財)日本緑化センター 2010年1月)