家畜ふん堆肥の需要量推計

 緑化樹木生産における家畜ふん堆肥の利用は、苗木を新規に植付ける際の元肥と、養成中の樹木への追肥とである。アンケート調査に回答した141件の生産者の総面積2,143haのうち、115件の合計面積1,834.5haで新規植付の回答があった。すなわち、新規植付対象面積比率は85.6%(1,834.5ha÷2,143ha)となる。115件が回答した新規植付面積の合計は273.7haなので、これを生産面積の合計1,834.5haで割ると14.9%となる。これを、新規植付面積比率とする。
平成11年におけるわが国の緑化樹木生産面積は14,908ha、これに新規植付対象面積比率を乗じたものが、生産面積の母集団となる。
  14,908ha×85.6%=12,761.2ha
これに新規植付面積比率を乗じたものを、新規植付面積とする。
  12,761.2ha×14.9%=1,901.4ha
新規植付面積を前提に家畜ふん堆肥の元肥施肥量を推計する2つの方法が考えられる。
1つは表6−1に示す、10a当たり平均元肥施肥量による単品施肥の推計である。すなわち、牛ふんだけで新規植付面積の元肥を施肥すると、およそ16万トンの牛ふんが消費される見込みとなる。同様に、豚ふんに換算すると約7万2,000トン、鶏ふんの場合では約8万6,000トンの需要が見込まれる。   
元肥需要量(推計その1) 元肥需要量(推計その2)
区 分 10a当たり平均
元肥施肥量(トン)
新規植付
面積(ha)
元肥需要量
(トン)
牛ふん 8.41 1,901.4 159,907.7
豚ふん 3.81 72,443.3
鶏ふん 4.51 85,753.1
区 分 件 数
(件)
施肥量 新規植付
面積(ha)
元肥需要量
(トン)
(トン) (%)
牛ふん 65 546 61.5 1,901.4 90,275.2
豚ふん 21 80 9.0 13,227.1
鶏ふん 57 257 29.0 42,492.2
馬ふん 2 4.5 0.5 744.0
合 計 145 887.5 100.0   146,738.5
もう1つは、11.5ha(115件×10a)に投入された堆肥量を1,901.4haに引き延ばす考え方である。
表6−2の件数合計が145件であるということは、1戸の生産者が複数の家畜ふん堆肥を元肥に使用していることを意味する。しかし、単品施肥であるか複数品施肥であるかにかかわらず、11.5haに合計887.5トンの堆肥が投入されたと考えることができる。
そこで、家畜ふん別に投入量を計算すると、牛ふんは11.5ha:1,901.4ha=546トン:Xトンから、90,275トン、同様に豚ふんは13,227トン、鶏ふんは42,492トン、さらに馬ふん744トンとなる。
これら2つの推計結果をあわせると、牛・豚・鶏の単一施肥による元肥施肥量は約7万2,000〜16万トンの範囲にあり、馬ふんを加えた4種混合の元肥施肥量の場合を仮定すると合計で約146,700トン消費されると想定することができる。

 10a当たり平均施肥量をもとに全国の追肥量を推計する。表6−3は高中木が植付けられている生産面積を推計し施肥量を算出したものである。

 例えば、樹高2.0〜3.0mの緑化樹木の植付密度を株間1.5m×うね間2.0mと仮定すると、10a当たり植付本数は333本となる。全国の2.0〜3.0mの生産本数を10a当たり植付本数で割って推定生産面積を求め、アンケート調査で得られた対象面積比率を乗ずると1,827.2ha(10,656千本÷333本÷10×57.1%)となる。

 アンケート調査による10a当たり平均追肥量は、牛ふん6.28トン、豚ふん2.82トン、鶏ふん1.20トンである。施肥量は植付けられている樹木の大きさにより異なるので、10a当たり追肥量は表6−3の施肥係数の欄に示す増減率を仮定する。したがって、樹高2.0〜3.0mの樹木を牛ふん堆肥単品で1回施肥すると、114,748トン(1,827.2ha×10×6.28トン×1.0)の使用量となる。

 しかしながら、表6−3で算出した推定生産面積の合計12,165haは、全国の生産面積14,908haを下回ってはいるもののかなり大雑把な計算値と考えられる。

  同様に1本当たりで推計した場合の推定施肥量も計算している。こちらは、1本当たり平均施肥量を使用する他は、10a当たりで推計したものと同じ数値を用いている。10a当たりでの推計結果より高めの数値が出ている。

高中木の推定生産面積と10a当たり換算の推定追肥施肥量
区    分 0.5m未満 0.5〜1.0m 1.0〜2.0m 2.0〜3.0m 3.0m以上 合 計
植付密度(株間m×うね間m) 0.25×0.8 0.6×1.0 0.8×1.5 1.5×2.0 2.0×2.5
10a当たり植付本数(本) 5,000 1,667 833 333 200
高中木生産本数(千本) 39,829 28,251 22,537 10,656 7,544 108,817
推定生産面積(ha) 796.6 1,694.7 2,705.5 3,200.0 3,772.0 12,168.8
追肥対象面積(ha) 454.9 967.7 1,544.8 1,827.2 2,153.8 6,948.4
施肥係数 0.25 0.25 0.5 1.0 1.5
10a当たりで推計した施肥量
(トン)
7,142 15,193 48,507 114,748 135,259 320,848
3,207 6,822 21,782 51,527 60,737 144,075
1,365 2,903 4,634 5,482 6,461 20,845
1本当たりで推計した施肥量
(トン)
89,832 63,719 101,662 96,136 102,091 453,440
29,565 20,971 33,458 31,640 33,599 149,233
6,254 4,436 7,078 6,693 7,108 31,569

■山林種苗生産における需要量推計

山林種苗生産における家畜ふん堆肥の利用は、苗木を植付・植替える床替え時の元肥であり、追肥に家畜ふん堆肥は使用していない。最近2〜3年に床替実績のない生産者167件と例外データ34件を除いた774件の総生産面積は55,805aで、これが床替対象面積となる。したがって、床替対象面積比率は65.9%(55,805a÷84,715a)となる。
774件の床替面積の合計は43,482aであり、これを生産面積の合計55,805aで割ると77.9%となる。これが床替面積比率である。
平成10年におけるわが国の山林種苗生産面積は1,387ha、これに床替対象面積比率を乗じたものが、生産面積の母集団となる。
  1,387ha×65.9%=914.0ha
これに床替面積比率を乗じたものが、床替面積と考えられる。
  914.0ha×77.9%=712.0ha

まず、10a当たり平均元肥施肥量による単品施肥の場合を推計する。
牛ふんだけで床替面積の元肥を施肥すると、およそ3万5,500トン、豚ふんではおよそ2万3,400トン、鶏ふんに換算するとおよそ1万3,300トン、さらに馬ふんでは約6万4,000トンの消費量となる(7−1)。
次に、77.4ha(774件×10a)に投入された堆肥量を712.0haに引き延ばす場合を推計する。
家畜ふん別に投入量を計算すると、牛ふんは77.4ha:712.0ha=1,761.5トン:Xトンから、16,204.0トン、

同様に豚ふんは2,363.2トン、鶏ふんは7,202.8トン、さらに馬ふんは828.1トンとなる(表7−2)。2つの集計結果から、牛・豚・鶏・馬の単一施肥による元肥施肥量は約1万3,300トン〜約6万4,000トンの範囲にあり、4種混合の元肥施肥量の場合を仮定すると合計で約2万6,600トン消費されると想定できる。

 

山林種苗の元肥需要量(推計その1) 山林種苗の元肥需要量(推計その2)
区 分 10a当たりの平均
元肥施肥量(トン)
床替面積
(ha)
元肥需要量
(トン)
牛ふん 4.98 712.0 35,457.6
豚ふん 3.29 23,424.8
鶏ふん 1.87 13,314.4
馬ふん 9.00 64,080.0
区 分 件 数
(件)
施肥量 床替面積
(ha)
元肥需要量
(トン)
(トン) (%)
牛ふん 354 1,761.5 60.9 712.0 16,204.0
豚ふん 78 256.9 8.9 2,363.2
鶏ふん 419 783.0 27.1 7,202.8
馬ふん 10 90.0 3.1 828.1
合 計 861 2,891.4 100.0   26,598.1